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2023.08.05 トップ

Match Preview & Column #15

Match Preview

二度追うところを四度追う。“徹底力”で清水に勝利を!

無念にも、前節、ホームで白星をあげることはできなかった。

城福浩監督はじめ、選手たちから「申し訳ない」の言葉が次々と口をつく。とはいえ、誰一人力を抜いている選手がいないこと、全員が「勝ちたい」と心底思ってプレーしていることはファン・サポーターには伝わっているはずだ。だからこそ、決して下を向かず、今節も10試合ぶりのホームゲーム勝利を目指して、クラブ、チーム、ファン・サポーターすべての力を一丸にして清水エスパルスに挑む。

前節、無失点で終えたものの、得点できなかったことに加え、指揮官はコーナーキック(CK)が2本に終わったことに対し、試合後の会見で問題視した。

「そこまで深いところまで行けていないということですから。相手にとって嫌なサイドの崩しではないシーンが多かった印象です」

その改善策として、北島祐二は「ミドルシュートを打って引き出すのか、コーナーの角を取って、そこからクロス(を上げる)。それを防がれたら最低でもCKというシーンをもっと作らなければいけない。何回も動かしてサイドを変えて、間が開いたところを狙うなどは、もっとやってもよかったと思う」と猛省。

チームとしても、いま一度、深い位置まで入り、決定的場面を生む確率を高めることを今週の練習で意識づけをした。

もう1つ、ポイントとなるのが“ゲームチェンジャー”の役割だ。

城福監督のサッカーにおいて、途中交代で入る選手に対しプレー強度、質の高さを先発選手以上に求めてきた。前節は、そのタスクが全うされなかったことに言及。

「ゲームチェンジャーというのは、攻撃的な意味だけではない。二度追うところを四度追うとか、コースを消しながら追うけれど、味方が抜かれたら、そこをさらに追う。寄せも、通常だったらクロスを上げられるところを、新しく入った選手が対応すれば体に当てて防げるなど、守備面での意味も大きい。その点で、前節は全く満足してない」。

そして、断言する。「それができなければ、絶対に清水エスパルスには勝てない」。

それは、今節の相手となる清水が他のチームとは一線を画し、J2屈指のチームだからである。

前回対戦時は第8節、4月8日まで遡る。当時、清水は7戦未勝利5分2敗と苦戦し、第8節が秋葉忠宏監督の交代初戦だった。それでも、東京Vは敗れた。「選手全員がJ1クラス」「他のチームとはレベルが違った」と、選手たちは個のレベルの高さを痛感したと口々に話していた。

だが、その一方で、「J1を感じられて楽しかった」と話す選手が多かったこともまた事実だ。

「間違いなく、今季対戦してきているチームの中では一番強い」と齋藤功佑。

齋藤に限らず、同じ思いの選手は多い。高い向上心を抱く選手たちにとって、相手が強ければ強いほど燃えるものだ。今節、3位と4位というJ1自動昇格射程圏内の中で、勝点3差で追われる立場でもあり、能力の高い選手たちと対戦できることを、選手たちは皆、一人のプロサッカー選手として非常に楽しみにしている。


中でも気合いが入っているのが稲見哲行だ。前回の対戦ではメンバー外だったが、メキメキと成長を遂げ、レギュラークラスの選手となった。特に待望するのが「乾貴士選手とのマッチアップです。日本代表の試合も見ていますし、ワールドカップでの活躍も見ている。そんな選手を自分が潰せたら自信にもなると思います。前節は怪我で欠場していましたが、ぜひ出てきて欲しい。自分の守備の力がどれだけ通用するのかを試したい」と楽しみで胸を膨らませている。

また、深澤大輝は「あの時とは、うちもメンバーが違う。でも、当時のメンバーも含め、本当にチーム全員で取り組んでlきた結果が今の立ち位置。誰が出ても、J1クラスの清水を相手にも戦えるというのを証明したい」とあらためて積み上げてきたからこそのチーム力を強調する。

この先、1つも落とせないJ1昇格をかけた死闘が続く中、果たして東京Vは現時点でその資格があると言えるのか。現状のチーム力を測る上でも、試金石の一戦となるに違いない。

8月6日は広島平和記念日である。何事もなく平和にサッカーの試合が開催されることに今一度思いを馳せ、10試合ぶりのホームゲーム勝利とともに忘れられぬ日にしたい。


(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 松田杏子)

Player's Column

『清水という強敵にこそ、“違い”を魅せる宮原和也に注目!』

「ヴェルディに来てくれて本当にありがとう!」

開幕戦から、そんなファン・サポーターからの声が後を絶たない。その声は、第29節を迎える今なお、試合を重ねるごとに大きくなる一方だ。

それほどまでに、右サイドバックでの宮原和也の存在は異彩を放っているのである。

地元・広島県のクラブチーム、サンフレッチェ広島のアカデミーでジュニアユースから育ち、ユースからトップチームへ昇格。2017年に名古屋グランパスに期限付きで移籍し、2019年からは完全移籍という形で2022年まで主力として名古屋の勝利に貢献した。2013年、2015年に広島でJリーグ、名古屋では2021年にJリーグYBCルヴァンカップと、優勝チームに三度身を置いた経験値を、新天地・東京ヴェルディで遺憾なく発揮している。

昨年オフの移籍に際し、J1、J2問わず幾多のオファーがあったことは想像に容易い。

その中で、ヴェルディを選んだのは「必要とされていると感じたから」。

城福浩監督や強化部からのその口説き文句は決してうわべではなく、実際、開幕戦から前節までの28試合、自身の体調不良での欠場1試合を除く27試合に出場。復帰戦のみ途中出場となったが、それ以外の26試合は先発フル出場が続いている。これはフィールドプレーヤーの中では最多出場時間であり、指揮官がいかに信頼しているかの何よりの証明と言えよう。

宮原自身も、「コンスタントに試合に出続けられていることが、ヴェルディに来て一番の収穫」と充実の表情で話す。

危機察知能力に優れ、決定的ピンチを招く前に相手の攻撃の芽を摘む。対人にも強く、ボールを奪ったあとは確実に味方につけ、攻撃の起点となる。そんなサイドバックとしての卓越したプレーにチームメイトたちから寄られる信頼も絶大だ。

同じサイドバックとして、今季は宮原とは逆の左サイドバックとしてレギュラー出場が続く深澤大輝は、大きな刺激を受けているという。

「和也くんは何でもできる。ある監督が『これをやれ』と言ったら、それにすぐ対応できるだろうし、違う監督が『これをやれ』と言ったらそれもできるだろうなという選手。常に落ち着いていて、欠点がない。J1で錚々たるサイドハーフの選手たちと対戦しているだけあって、スピードもありますし、やられてはいけないところをわかっているなと感じます。ポジショニング、1対1の対応、すべて見習うところがあって、右サイドに和也くんがいる限り、僕も左サイドで負けられない」。

また、宮原同様、今季から東京ヴェルディに加入した齋藤功佑は、「守備の能力が高い上に、気を使えたり、対人の駆け引きや足を出すタイミングなど、パッと見ではわからない、細かいサッカーの部分での能力の高さを感じます。例えば、能力値を五角形などで表すとしたら、全部が大きい五角形になるイメージ。だからこそJ1でずっとやってきてるんだなと思います」と絶賛する。

左サイドハーフで起用されることの多い北島祐二は、普段の練習の中で対峙すること多い。その際、「僕の思考を読んでいるなというのをものすごく感じます。相手の考えていることを予測する能力、想像力はすごいなと思います」と、毎回相手の考えを見透かす能力の高さに閉口するという。

GKマテウスに、宮原の存在について尋ねると、ただただ両手を広げて「言うことがないよ」と困った表情をするのみ。あえて言葉にしてもらうと、「90分を通してミスが本当に少ない選手。ディフェンダーとしてファウルなしでボールを奪いにいく上手さ、シュートブロック、クロスの対応というところで、GKから見て常にいてほしいところにいてくれる。パーフェクト!」だと最大の賛辞を口にしている。

これだけ守備能力に長けた選手が、大きな怪我もなく試合に出続け、毎試合コンスタントに実力を発揮してくれていることが、リーグ1位の失点数(第28節終了時点)の一因となっていることは言うまでもないだろう。ハイラインを敷いての戦いがスタイルの今季の城福監督のサッカーにおいて、宮原の存在は欠くことのできない絶対的なピースなのである。

宮原といえば、東京ヴェルディ公式サイトのSNSでも紹介されている通り(https://twitter.com/TokyoVerdySTAFF/status/1663035953282449416)、ゴールを決めた選手のもとへ、いつ、いかなる時も必ず祝福へかけつけ、歓喜を共にする。

間違いなく意図があると思い、理由を尋ねても「特にないです」。意識してのことかと問うても「別に」と、サラリとかわされてしまう。だが、仲間たちはその行為の裏にある宮原の優しさ、想いをそれぞれの視点で感じ取っている。

チーム最多の4得点を挙げ、宮原から4度の祝福を受けている齋藤は次のように話す。

「もちろん、一番はチームに点が入って嬉しいということだと思いますが、そのゴールの瞬間が嬉しいということをチームに刷り込ませるという意味でも大事だと思いますし、みんなが集まることで、またチームとしての一体感も増すだろうし、そこからあらためて集中していこうという気持ちにもなる。(得点者に)真っ先に行く和也くんの姿勢には、いろんな意味あいがあると思いますし、何より、和也くんの優しさを感じます」。

5節藤枝戦で自身Jリーグ初ゴールを記録した北島祐二は、喜びのあまり宮原の祝福の抱擁を振り解いてしまったものの、その心遣いをリスペクトしているという。

「僕のゴールや仲間のゴールを自分のことのように喜んでくれるが本当に嬉しいです。さらに、『ここからさらに勢いをつけよう』という想いがあっての行為だと思う。和也くんのチーム思いの一面が行動に現れているからこその行動だなと、僕は勝手に思っています(笑)。だって、試合が決したとも言える4点目、5点目でも祝福に行くんですよ。僕だったらちょっとできないかも。1点目でも、その時の体力次第ではキツくて行けないと思います。なのに和也くんは、どんなに遠くても、何点目でも必ず行ってる。マジで偉いです!」

そうした仲間思いや人懐っこい一面は、普段のロッカールームでは日常茶飯事に見られるという。

「試合中のミスをイジってもらうのですが、逆に、僕としてはイジってくださった方がやりやすいので、本当に愛のあるイジリだと思っています。あと、けっこうパシリ的なことを頼まれるのですが、それに対して僕も反抗したりして、和也くんをイジったり(笑)最近は話す機会が増えて嬉しいです」とは稲見哲行。

北島も、「うしろからいきなら大声で叫んだり、ドアの向こう側で待ってて、いきなり驚かせたりして、めっちゃビビらせてくるんですよ。それで、めちゃくちゃ笑ってる。そうやって、先輩後輩関係なくコミュニケーションをとってくれて、本当に良いつなぎ役をやってくれているなと思います」と嬉しそうに人柄を話す。

隙のないプレーに、甘いマスクとスマートな取材対応。そんな表向きの表情とはまた違った、心を開いたいチームメイトにだからこそ見せる素顔に「僕は、『永遠の高校生』と呼んでいます」と北島。そのギャップがなんとも魅力的だ。

自ら選んだヴェルディというチームだ。「来たからにはJ1に上げたい」との思いは強い。その意味でも、今節の清水エスパル戦はもちろん、1試合1試合、全ての試合で結果が求められる。その中でも、「その場凌ぎの試合ではなくて、チームとしても個人としても成長につなげていけるようにやっていかなければいけないなと思っています」。J1昇格が決してゴールではないと、その先をしっかりと見据えている。

「ずっとJ1に行けていないので、このチームでJ1に上がりたい。そのためには、ファン・サポーターのみなさんの力もものすごく必要になってくるので、一緒に戦っていければいいなと思います」。

大一番でこそ違いが浮き彫りになるはず。J1クラスの選手が揃う清水エスパルスとの対戦、本領発揮の宮原のパフォーマンスを堪能したい。

(文 上岡真里江・スポーツライター/写真 近藤篤)