MATCH試合情報
MATCH試合情報
【試合展開】
天皇杯が2試合続いて中断していたリーグ戦が再開を迎えた。残り12試合となり、いよいよ終盤戦に突入する。ヴェルディが対戦を残す相手は、どこも前半戦で難しい試合を強いられた難敵ばかり。今日、敵地に乗り込んで対戦したザスパクサツ群馬も、前半戦はアディショナルタイムの2点で辛くも勝利することができたが、90分の中でもイーブンの試合展開に持ち込まれた相手だ。リーグ戦では連敗中のヴェルディにとっては、何が何でも勝ち点3を手に入れて、上位争いに食らい続けていくことが肝心だ。平本一樹を怪我で欠くチームな、前回の天皇杯2回戦からシステムを変えて4-4-2を選択。2トップには杉本竜士と高木大輔を置き、右MFに高木善朗を起用した。
夕方までは風一つない天候だった前橋だが、徐々に風が出始めて、キックオフの時点では強めにピッチレベルを吹いていた。前半、風下に立ったヴェルディは、味方のゴールキックやロングフィードが風に押し戻され、逆に相手のフィードが風に乗って伸びる難しい状況。序盤こそ風に苦しめられそうな予感もあったが、早々の3分に心配は払しょくされた。左サイドのタッチライン際でフリーキックを得ると、安在和樹が蹴った鋭いキックがニアで相手DFに引っ掛かるが、クリアし切れなかったボールがファーサイドに流れると、ボールはひとりで待ち構えていた井林章の元へ。井林はワントラップしてボレーで右足を振り抜き、抑えたシュートをゴールに叩き込んだ。これまでなかなか得点し切れなかったセットプレーで早々に先制に成功したヴェルディ。ここから風をものともせずに猛攻に出たかったが、風に乗ってボールを蹴り込み、前線にラッシュを仕掛けてくる相手のプレッシャーに負けてラインを下げて対応する。特に全体のバランスが攻撃寄りに傾き過ぎていたため、ボランチと最終ラインの間のスペースを上手く使われ、マークがハッキリしないままにボールを深い位置まで持ち込まれた。先制直後から同じように曖昧な守備の隙を突かれて攻め込まれ、18分と32分にはいつ失点してもおかしくない決定機を作られた。そして36分にはチャレンジ&カバーの関係が曖昧なところを使われ、スペースに飛び出した相手選手をつかまえ切れない。ウェズレイの対応が後手に周りペナルティエリアまで運ばれ、佐藤優也の出端でゴールに流し込まれた。
全体のバランスの修正などを考慮した冨樫監督は、後半からウェズレイに代えて南秀仁を投入。三竿健斗がセンターバックに下がり、高木善をボランチに、南が右MFに入った。この采配が的中した。中盤の深い位置から中後雅喜と高木善が細かくボールを動かしながら、チームにリズムをもたらしていく。大きく流れを変えたのは南の存在だった。ボールを積極的に受けて失わず、相手のプレスをいなして前を向き、サポートに入る杉本や高木大を使いながらショートパスで攻撃にテンポを生み出す。65分に安西幸輝を投入すると、最後のピースがはまる。ペナルティエリアの中で安西がボールを受けてタメを作ると、サイドに膨らみながらサポートに近付いた南が落としたボールを受けて、狙い澄ました横パス。ペナルティエリアを横断したボールの先にいた杉本はこれをスルー。その奥にいた中後が、揺さぶられた相手を置き去りにしてワンタッチで流し込んでヴェルディが勝ち越しに成功する。チームは1点で満足せずにゴールへの執着心を見せる。69分、自陣のハーフライン寄り地点で高木善がボールを奪取。ボールを受けにきた杉本が前を向いて運び、右サイドから顔を出してきた南へ預ける。前線にラッシュを掛けていく前線の選手たち。すると南はパスではなくドリブルを選択してペナルティエリアの中へ。DFを巧みなフェイントでかわしながらコースができた瞬間を見逃さずに、右足を振り抜いて強烈なシュートをゴールの左隅へと叩き込んだ。電光石火のゴールラッシュで一気に相手の意気を削ぎ、前に出ざるを得ない状況を作る。その後はスペースを巧みに使いながら、人とボールを密集地に集めて、相手の視線を集めてからサイドを変えて揺さぶり、そこからスピードアップして猛攻を仕掛けた。前半こそ相手のラッシュに呑まれたディフェンスも落ち着きを取戻し、前線からのプレスで的を絞って撥ね返し、最後まで集中力を欠くことなくシャットアウト。ヴェルディがリーグ再開初戦で好発進に成功した。
次節はホーム味の素フィールド西が丘にV・ファーレン長崎を迎え、その3日後にはまたもホーム味の素スタジアムに大宮アルディージャを迎える。上位陣とのホーム2連戦は、終盤戦で勢いに乗って戦い切るためにも、是が非でも勝ち点3を積んでいきたい。正念場を迎えるチームは、スタンドの熱気とともに熱く激しく戦う。ぜひ、スタジアムでともに戦い、勝利を積み上げていく喜びをともに分かち合おう。
【試合後選手コメント:DF 3 井林章】
「最近の自分たちの練習から、セットプレーで点をとりたいという目的があったので、それが形に表れて良かったと思います。(先制点は狙い通り?)ディフェンダーの心理を考えると、どうしても下がらないといけなくて、となるとボールがマイナスにいった時はヘディングを返し切れなくて、ファーに流れることが多い。自分もクリアする時にちょとマイナスにポジションをとることを意識しているので、今回それがたまたまいいところにボールが来てれくれたからです。ボレーシュートはたまたまです。一応狙ってはいますが……。ウチは先制点が大事なチームなので、どんな形であれ先制して優位に立てた事で、失点はしてしまいましたがそれでもまだ振り出しに戻るだけだったので、良かったと思います。前半は風が逆向きなので、相手はターゲットマンを入れてきたり、蹴ってきて明らかに僕たちの裏を狙ってきていたので、それはしょうがないことで、逆に後半は自分たちが支配する時間が長くなると皆も思っていたし、自分も思っていました。失点は良くないですけど、試合の進め方は、自分たちが前向きにプレーすることが多くなっていたので。相手のクロスに対して、もう少しマークをハッキリさせる必要があります。どんなチームが相手でも勝たないといけないですし、ここで勝つことが昇格につながる道なので。どんな相手であろうと自分たちのサッカーをすることが大事です」
【試合後選手コメント:MF 11 南秀仁】
「30試合出ているので、10ゴールは獲れていておかしくないですよね。ただ、プレーを生で見ていない人も結果を見て、少しは良い選手なのかなと注目して観てもらえるポイントでもあると思うので、それで自分のプレーを観に来てくれる人が増えたらいいなと思います。3点目の場面は、幸輝のオーバーラップを待っていたんですが、なかなか上がってこなかったので、自分で行ったほうが早いと思って行きました。サイドハーフをやりはじめて、後ろからこられるのも慣れてきました。前は得意じゃなかったのですが、また一つ、自分の中でできることが増えてきたのかなと思います。今日のゴールは、思い切り打つというのは自分のゴールの中でも少ないと思うので、スッキリしました。打った瞬間に入ったと確信したので、打った瞬間にはサポーターの方へ走っていました。2点目のシーンは、サイドで起点を作って、中につけて自分もゴールに向けてペナルティエリアの中に潜り込んでいって、何かしら起きたらいいなと思っていたんですが、あれは竜士が上手くスルーしてくれて上手くいきました。相手は先週の天皇杯がなくて、僕らよりも少しコンディションがよくて、自分たちは前半は多少疲れているのかなと思いましたし、一回出たのでやらなきゃいけなかったので、できて良かったです。たぶん、止まって受けるというのは誰でもできると思うんですが、パスを走りながらもらって空間を認識することが大事。スピードに乗りながらプレーするのは難しいことだけど、自分はそれができるので、冨樫さんもそう思っているだろうし、自分はそう思っているし、それが持ち味でもあるし。トップスピードでもボールタッチが乱れないというのは期待してくれていると思います」
【試合後監督コメント:冨樫剛一監督】
――試合を振り返ってください。
「最初から、難しい試合になる、選手たちの力が試される試合になると思っていました。自分たちが先週からリスタートで獲れるようにトレーニングをしてきて、少し早い時間であのような形で先制できて、自分たちがリズムをとれるかと思っていました。ですが、風下で少し相手のモビリティを捕まえ切れない中で、ハッキリしない守備で追いつかれてしまったので、そこは少し悔いが残っています。ハーフタイムに選手交代を含めて、もう一回良い守備から良い攻撃を生むという中で、途中から入った選手やポジションが変わった選手がすごくチームのために何をするべきかがプレーに表れて、後半は自分たちの思うようなゲームが進められたのかなと思います。また攻撃のところで、ゴールをとるためにペナルティエリアの中で崩している部分も、彼らのアイデアがトレーニングでよくやっているところなので、そういう形でも点を獲れたことは自分たちにとっても良い内容になりました。またサポーターがすごく毎試合応援してくれている気持ちが入っているところも自分たちの一緒に戦っている力だと思いますし、次につながるように来週も良いトレーニングをして迎えたいと思います」
――前半のハッキリしない守備で、選手たちは守りにくそうに見えたが。
「やはり一番は、相手のトップが下りてきた時に、センターバックが捕まえるのか、あるいはサイドバックとの間のところがサイドバックなのかボランチなのかハッキリしなかったことです。そして自分たちが前へ矢印を向けている中で、前向きにと前掛かりはちょっと違うので、自分たちが良い攻撃を生みたいがために、相手のボランチまで自分たちのボランチが食いついてしまい、最終ラインとボランチとの間が空いてしまって、そこにカウンター気味にボールをつけられていることが原因かなと思っていました。そのため、試合中に相手の出所に対して2トップが縦の関係を作って消すこと、ボランチがどこまで食いついていくのか、攻撃をしている時のリスクマネジメントで必ずいいバランスを片方のボランチがとること、そして一番大事なのは、センターバックがハッキリしたマークをして前に押し出してあげることをハーフタイムに選手たちに伝えて、選手たちも中で感じていたことなので合致したかなと思います」
――南に期待したことは?
「彼は今週のトレーニングが良くて、色々なトラブルを抱えていたにも関わらず、今週に良い状態で戻ってきてくれました。自分たちにとっては彼の空間でのボールコントロールであったり、プレッシャーの中で少し間を作ってサイドバックとの2対1を作ったり、また彼はゴールを獲るところで仕掛けることもできるので、そういうところで彼を期待して使いました。また中盤の構成の中で、ボールを動かせる選手が増えたことによって、より生きるのではないかなと。中後と善朗のところと、センターバックのファーストボールがスムーズになったことが、自分たちにとって良くなった部分だと思います」