日本瓦斯株式会社
株式会社ミロク情報サービス
株式会社H&K
ATHLETA
ゼビオグループ

SDGs²スタジアム2021キックオフトークセッション『スポーツ界から変えていくジェンダー平等社会』

SDGs²スタジアム2021キックオフトークセッション

■開催概要

2021年4月20日(火)16:30-18:30

ヴァーチャルスタジアム JFAハウス

 

モデレーター:平原依文

 

■ご挨拶

平原依文さん

皆様、こんにちは。SDGsと教育を軸に活動しております、平原依文と申します。トークセッションの本題に入っていく前に、SDGsの根本的な理念である『誰一人取り残さない』という考えに着目したいと思います。

 

SDGsが国連サミットで採択された2015年当時、私はスペインのバルセロナに留学していまして、その時の出来事について話をさせていただきます。FCバルセロナの本拠地カンプ・ノウの横にあるバルセロナ大学に通っていたのですが、授業後に女性のクラスメイトから『イブン、今から広場でサッカーをしようよ!』と声をかけられました。サッカーは初めてでしたし、スポーツが得意ではなかったので『できないよー!』と言ったのですが、その時に彼女が答えた一言が、SDGsの概念に紐づくものだったと感じています。

彼女は『スポーツはみんなのためのものだから、恥ずかしいなんてことはないし、ただ楽しめればいいじゃない』ということを言ってくれたのですが、それを『誰一人取り残さない』という考えに結びつけた時に、まさにスポーツ、そしてサッカーはすべての人が楽しめて、すべての人を健康にすることができる存在であるからこそ、SDGsの概念と合致していると感じています。

 

そこで今日はスポーツを通して、『ジェンダー平等を実現しよう』、『すべての人に健康と福祉を』というテーマについて、素敵なゲストの方々とお話をしていきたいと思います。

 

■スポーツ界から変えていくジェンダー平等社会

【ご登壇者】※当日の着席順

ヤンセンファーマ株式会社 広報リード 岸和田直美 様

Jリーグ 社会連携室長 鈴木順 様

WEリーグ 理事 小林美由紀 様

フレスコ・キャピタル ベンチャー・パートナー 鈴木絵里子 様

東京ヴェルディ 普及部コーチ/SDGsヴェルレンジャー隊長 中村一昭

 

平原依文さん

まずは東京ヴェルディのSDGsパートナーであるヤンセンファーマ株式会社様の岸和田さんに質問をしたいと思います。ヤンセンファーマさんはジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門を担っていらっしゃいますが、もともとグループ全体で本当に多くの女性が活躍されていると思います。その理念や実際の環境について教えていただけますか。

 

岸和田直美さん(ヤンセンファーマ株式会社)

この『スポーツ界から変えていくジェンダー平等社会』というトークセッションの最初の発言が企業側からのものになるのですが、企業としての事例をご紹介することでご参考になればと思いますし、私たちもスポーツ界から学びたいと思っています。ヤンセンファーマ株式会社はジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門になりますので、このご質問にはグループの一員という立場で回答させていただきます。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソングループの創立は135年前のアメリカに遡ります。創立当初14名の社員がいたのですが、その半数を超える8名が女性でした。女性のアイデアや提案をもとに発明した製品も多数あり、現在に至るまで多くの女性が活躍している職場です。今日はそのジョンソン・エンド・ジョンソングループの特徴を二点ご紹介したいと思います。ひとつめは、ジェンダー平等も含む『ダイバーシティ&インクルージョン』を、私たちがいかに経営上の重要な戦略に位置づけているか。そしてふたつめは、それをどのようなアプローチで実践しているかということです。

 

私たちジョンソン・エンド・ジョンソングループには、企業理念に位置づけている『Our Credo』というものがあります。日本語では『我が信条』と呼んでいますが、そこには会社が全従業員に対して果たさなければいけない責任について、『従業員ひとりひとりを尊重し、それが受け入れられる職場環境を築かなくてはならない』ということが名言されています。これは実際にはどういうことなのか、私なりにサッカーに例えて説明してみたいと思います。サッカーチームには攻撃をするフォワードがいて、守備をするディフェンダーがいて、その両方を担うミッドフィルダーがいて、ゴールを守るゴールキーパーがいますよね。その役割分担があるなかで、それぞれの選手の強みや弱みを尊重したうえでポジションが決まっていて、チームとして点を取るものだと思います。例えばゴールを決めるのが非常に得意なフォワードの選手がいたとして、監督はその選手に対して『点を取れ。ゴールも守れ』という指示はしないのではないでしょうか。監督もチームメイトもその選手の得意な部分とそうではない部分を分かったうえで、チームとして勝利を目指すのだと思います。

 

それはジェンダーや国籍の違いなどに置き換えても、変わりません。企業内ではプロジェクトをリードすることが得意な人がいれば、誰かをアシストすることが得意な人もいて、企画立案が得意な人、数字に強い人などそれぞれの強みがあって、弱みはチームで補いあっています。サッカーの試合との違いをあえて申し上げると、企業のなかでは女性も男性も同じフィールドで連携しながら、世の中によりよい製品やサービスを提供するために仕事をしています。そこでは女性だから、男性だからということは関係なく、お互いの強みや弱みを受け入れながら、個人が最大限の力を発揮することをチームとして実践しています。

 

実はジョンソン・エンド・ジョンソングループでは『ダイバーシティ&インクルージョン』ではなく、『ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン』を経営上の重要な戦略としています。ジェンダー平等は狭義の『ダイバーシティ&インクルージョン』と位置づけていて、今は個人の能力が最大限発揮されるために必要なサポートやリソースを会社として提供していくこと、これを『エクイティ』と呼んでいて日本語で言うと公正性という意味ですが、そのことを会社のコミットメントにしています。

 

次に、この『ダイバーシティ, エクイティ&インクルージョン』を実際にどうやって進めていくかというアプローチについてお話をすると、私たちは日常の業務のなかで『“意識をする”から“行動”に変える』ということをスローガンにしています。これを実践する方法には、経営層からのトップダウンと現場からのボトムアップという両方のアプローチがあります。ボトムアップの環境についてですが、ジョンソン・エンド・ジョンソングループのなかにはERG(Employee Resource Group)という有志の社員によるテーマごとのボランティアグループがあります。そしてさらにそのなかにWLI(Woman’s Leadership & Inclusion)という女性の活躍を後押しするグループがあります。日本ではこのグループは15年活動していて、アメリカ本社では25年にわたって活動しています。今年は日本では200名の社員が希望してWLIで活動しているのですが、そのうちの50%は男性です。女性だけが集まって活動をしているのではなく、男性も同じ割合で女性活躍という目標に向かって取り組んでいて、ここがすごく特徴的であると思っています。

 

平原依文さん

岸和田さん、ありがとうございました。

鈴木絵里子さんは女性のベンチャーを支援する活動をされていますが、ご自身のキャリアのなかで、特に女性が少ないというイメージの強い金融業界において、大企業からベンチャー企業まで幅広く関わっていらっしゃいます。そのなかで感じることを教えていただけますか。

 

鈴木絵里子さん(フレスコ・キャピタル)

私はベンチャー投資家として、テクノロジー系のスタートアップ企業やモビリティ関連の企業などに対して、世界中で投資をする仕事をしています。ベンチャーキャピタルの世界では、投資をする人間のうち女性は1割以下です。投資の業務をサポートする女性の人材は近年増えているのですが、リスクを取って意思決定をするポジションにいる女性は少ないです。そういった背景もあり、投資を受けている側の起業家、スタートアップ、創業者においても、女性は5%未満と言われています。そんななかでも、色々なご縁があり私としては天職だと思って日々働いていまして、そこで感じたことを話したいと思います。

 

SDGsにおいてもスポーツ界においても共通だと思うのですが、課題はビジネスチャンスになると考えています。女性だから投資を受けることが難しいという現状はあるのですが、まずはビジネス機会としてどうかということを見させていただくようにしています。例えば女性のニーズに特化したテクノロジーの会社が近年とても増えていて、こういったテクノロジーはFemTech(フェムテック)と呼ばれています。これらのテクノロジーを開発するのは本当に大変なのですが、非常にニーズが大きいです。様々な社会的事情や、多くの企業で意思決定層に女性がいないということにより、本来必要な女性向けのプロダクトが何十年も存在しないまま現在に至っているということがあります。それが今ようやくテクノロジーの発展やSNSでの発信によって可視化されてきて、そこでイノベーションを起こしていこうというのがFemTechです。

 

具体的な例を挙げると、実は生理用品の商品開発に女性が関わってこなかった場合が多く、何十年もそこにイノベーションが起きていませんでした。でも女性のエンジニアや商品開発担当者が増え、そこへの投資も増えていくと、もっと使い勝手のよい生理用品ができます。さらにそこにIoTを加えて、自分の健康管理のために月経の量や周期を測れるといったイノベーションが起きています。それが現在のFemTechの領域で、非常におもしろいと思っています。

 

今、世界中で成功する女性の起業家が増えてきています。1000億円以上の企業価値を持ついわゆるユニコーン企業のうち、女性が創業した企業が世界で10社強出てきています。これは日本全体のユニコーン企業の数より多いので、世界中の女性起業家に投資をすれば、それだけ成功の可能性があるのではないかと考えています。

 

ただしこういったビジネスチャンスに気づくには、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を取り除いていかなくてはならないことを痛感しています。これまでの商習慣や固定観念から、『そんな商品は売れないだろう』とか、『そういうニーズはないのではないか』とか、『そんな商品にお金を払う人はいるのか』とか、いろいろなバイアスがかかってしまっていると思います。でもそういうものはアンコンシャス、無意識のうちにあるということにまずは気づいて、それらを取り除いたうえで数値を客観的に見てみると、女性の起業家に投資することが非常に有意義なビジネスチャンスであることが見えてくると思います。

 

私がこれまで関わってきたベンチャーキャピタルのファンドは、ありがたいことに多様な人材で成り立つチームでしたので、どんどんバイアスがそぎ落とされていきました。外国人同士のチームで、年齢も違いますし、タジキスタン人がいたり、山登りが好きなシリコンバレーのおじさんがいたりと、多様でアンコンシャスバイアスのないチームです。

その結果何が起きたかと言いますと、投資先の半数以上が女性起業家の創業した企業になっています。これは意図的に女性に投資をしようと思ったわけではないのですが、ヘルスケアや環境に関するよいテクノロジーの企業を探していった結果であり、チームにバイアスがなかったことによって、とてもよい投資先を見つけることができました。こういったことを、私の仕事を通して感じています。

 

平原依文さん

鈴木さん、ありがとうございます。

次にスポーツ界のお話を伺いたいと思います。小林さん、女子サッカーは今年、WEリーグとしてプロ化されます。プロリーグの立ち上げは本当に大変なお仕事だと思いますが、男女の待遇の差など現状の課題や、未来に向けたビジョンについて教えていただけますか。

 

小林美由紀さん(WEリーグ)

私自身は大学で女子サッカー部を立ち上げたのですが、私たちが部屋に入ると当時の男子サッカー部の監督に『同じ空気を吸いたくない』と部屋を出て行かれるというような経験もしました(笑)。アメリカに留学したときにはサッカーは女子のスポーツとして人気があり強かったのに、日本にいるとサッカーは女がやるものじゃないと言われ、それで発奮して女子サッカーを続けてきたようなところがあります。日本サッカー協会の登録選手数約90万人のうち、女子選手は約6%です。指導者に至っては2~3%。これは先ほどのお話の投資家や、国会議員における女性の割合の低さに通じるものがあると思います。

 

そのようななかで、2011年になでしこジャパンは女子ワールドカップで優勝しています。さらにU-17とU-20の女子ワールドカップでも世界一になっていて、3カテゴリーのワールドカップで優勝しているのは世界で日本の女子だけです。

 

皆さんなでしこリーグをご存知だと思いますが、選手は基本的にはアマチュアで、仕事が終わってからトレーニングをするという生活を続けてきました。国外を見ると、アメリカでは女子サッカーはずっと盛んでしたが、近年はサッカー発祥の地であるヨーロッパでも女子サッカーに力が入れられるようになってきました。バルセロナ、レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッドといったクラブが女子に投資を始め、待遇もよくなり、競技力も上がっています。ここには社会のウーマンエンパワーメントの流れがあります。サッカーは世界で最も多くのファンを持つと言われていますが、そのアイコン的なスポーツを女性がプレーしている、それを支えるということがヨーロッパの社会で求められた結果、競技がさらに盛んになり、実際に興味を持つ人が増えて、5~6万人の観客を集めて試合を開催するに至っています。

 

日本の女子選手たちは、レベルは高いものの仕事をしながらプレーをしてきました。それがよい面もありましたが、サッカー選手として身体を作ったりすることなどを考えると限界があります。2011年から10年経ってしまいましたが、今プロ化しないと再び世界一になることは難しいだろうと考えました。それに加えて、社会のアイコンであると同時に男性のイメージが強いサッカーというスポーツで女性が活躍することによって社会を変えていこうという思いもあり、Women Empowerment League=女性活躍リーグということでWEリーグを立ち上げました。

 

4月下旬からプレシーズンマッチが始まり、9月に開幕します。17チームの加盟申請があり11チームでスタートするのですが、ルールとしてスタッフの半分は女性であること、コーチングスタッフに女性がいること、運営会社の意思決定に関わる層に女性がいること、試合会場に託児所を設けることなどの参入基準を設けました。また11チームでリーグ戦をすると毎週必ず1チームは試合がない状態になるので、そのチームには理念推進活動を実施することを義務づけていて、それにともないクラブに理念推進担当を置くことにしました。サッカーのパフォーマンスを上げて世界一になることはもちろん、女子サッカー選手が少女たちの夢になることを目指しています。

 

これで女子サッカー選手というものが初めてサッカーだけでお金をもらえる職業になったので、選手たちが発信をしていくことで日本の社会を変えられたらと思っています。まずは選手が自分たちをエンパワーメントして自信を持って輝くことで、周りの人々や子どもたちをエンパワーメントしていく、そんなリーグでありたいです。大変ではあるのですが、これからを楽しみにしています。

 

鈴木絵里子さん(フレスコ・キャピタル)

素晴らしいと思います。ロールモデルを目指しているなかでプレッシャーはあると思うのですが、そこで成功して輝く女子サッカー選手が増えれば、本当に大きな波及効果があると思います。私が欧米で仕事をするなかで感じたことをお伝えしたいのですが、アメリカではミーガン・ラピノー選手(女子アメリカ代表)が本当に格好いい女性像、なりたい女性像のトップに君臨していて、そのため次世代の女性たちがそれまでと全然違うマインドを持って育っているところを見ると、多様なロールモデルになる選手が出てくると本当に素晴らしいなと思いました。

 

小林美由紀さん(WEリーグ)

ありがとうございます。今は女性活躍の意味でWomen Empowerment Leagueと言わなくてはいけないのですが、いちいちそれを言う必要がない本当のWE League=私たちのリーグにしていきたいというのが目標です。

 

平原依文さん

ありがとうございます。インタラクティブに会話が生まれていて、素晴らしいですね!

次は鈴木順さんに伺いたいと思います。Jリーグでも多くの女性スタッフが活躍されていると思いますが、ここまでのお話を聞いて、いかがでしょうか。

 

鈴木順さん(Jリーグ)

僕は2019年の秋にJリーグに入ったのですが、その前は2011シーズンから約9年間川崎フロンターレにいました。Jリーグに来て思ったのは、『女性が多いな』ということです。先ほどの岸和田さんのお話にあった“得意分野”のようなものに近い部分で言いますと…、リーグに比べてクラブの労働環境は一般的に結構ハードなんですね。例えばナイトゲームであっても、お客さんに喜んでもらうための準備として朝8時とかに集合して、試合前のイベント関連の設営をして、試合中にそれを片付けて、試合が終わったら選手をファンサービスの場に誘導して、家に帰ると日付が変わっています。そういう(力仕事や長時間の稼働も多い)環境を見ると、女性が得意な部分ではないと思います。

 

そういったクラブから来た立場で言うと、Jリーグは女性スタッフが多いなと感じました。リーグの経営陣で見ると常勤理事5人のうち1人は女性です。パーセンテージで言えば20%が女性というボードなので、一般企業に比べると比率はまだ多いのかなと。Jリーグで57クラブあるうち、唯一女性が社長なのはV・ファーレン長崎です。髙田明ジャパネット元社長の娘さんの髙田春奈さんが務められていて、そういうクラブも出てきています。お話を聞くとジャパネットルールのようなものがあってクラブとしてすごくちゃんとしていて、『いいなあ』と感じます。

 

でもどうしてもスポーツの現場って、自分がやりたいんですよね。たぶん中村コーチもそうだと思うのですが、目の前の子どもが喜んでくれるためだったら一生懸命やっちゃう。労働条件がどうとかあまり考えないでやっちゃうのが、いいところでもあり悪いところでもあると思っています。そうやってどうしても体力ありきな感じでやってしまうので、思想的にもアウトプット的にも、もう少しクラブに女性がいた方がいいかなと思っています。

 

Jリーグとしても子どもや女性の集客が少ないので、そこは各クラブにとっても課題です。なのでトイレをきれいにしたり、温かい食べ物を出せるようにしたり…。スポーツ観戦といえばビールとカップに入った唐揚げといったようなスタジアムグルメだけではなくて、女性にも好んでいただけそうなスイーツを出したり、いろんなことをやっているんですけど、でもそれを考えているのが男性だったりするので(苦笑)。

 

先ほどの鈴木絵里子さんがお話をされていたFemTechの特集を僕もテレビで観たのですが、女性の月経のバイオリズムに合わせて打合せやデスクワークのスケジュールを調整してうまくいっているところもあるようなので、サッカー界もそういうことを取り入れていっていいんじゃないかなと思いました。リーグは(力仕事ではなく)デスクワークが多いので、女性はもっともっと活躍できると思います。

 

今、小林さんのお声がけで僕もWEリーグの会議に出させていただいています。Jリーグはこう、WEリーグはこうと分けるのではなく、一緒になってサッカー界全体で見て男女比率の課題などを考えていけば、もっともっとサッカーは広がっていくと思います。僕はボランティアで子どもたちのサッカーのコーチもしているのですが、この5年、10年くらいは必ずどこのチームにも女の子がいて、試合に出ている女の子はうまい子ばっかりです。でも中学生になると、彼女たちの行くところがないんですよね。クラブチームの女子のジュニアユースくらいしか。中学校に女子サッカー部がなくて、でも運動が好きだから女子バスケ部に入ってしまったりしています。そういった環境に対して、JリーグもWEリーグも関係なくサッカー界全体で改善に取り組んでいけば、選手やスタッフの男女比率も変わっていくと思うので、WEリーグが発足することは非常によい刺激になるのではないでしょうか。

 

 

平原依文さん

まさに“みんなの”WEリーグの方向に前進して行きそうですね。ありがとうございます。

最後に中村コーチ、質問をさせてください。中村コーチはサッカーの指導者として、もしくは娘さんも息子さんもいる父親として、普段感じていることはありますか。

 

中村一昭(東京ヴェルディ普及部/SDGsヴェルレンジャー)

はい、まずは改めて自己紹介をさせてください。皆さん、初めまして。東京ヴェルディ普及部、SDGsヴェルレンジャーの中村です。あだ名は“イケメン”と申します(笑)。よろしくお願いいたします!

まず鈴木順さん、東京ヴェルディは労働環境めちゃくちゃいいです!(笑)

 

私たちは普段はサッカースクールの指導や、SDGsヴェルレンジャーとして障がい者スポーツ体験教室、特別支援学校などいろいろな場所を訪問しての指導を担当しています。SDGsに対する私たちの本気を示す意味でもウェアにSDGsのロゴを入れたのですが、振り返ってみると男性コーチだけで活動を実施していることがほとんどでした。そこで今年度から、あるホームタウンでの活動は全て男性と女性のスタッフで実施することにしました。2年、3年と時間がかかるかもしれませんが、これを全体に拡げていく第一歩にしたいと思っています。

 

スポーツ指導をしていると感じることがあります。例えば今日のこの場のように、初めて会った人同士だと少し固くなってしまう部分もあるかもしれませんが、一緒にスポーツをすれば誰とでも仲間になることができます。このようにスポーツには人と人を近づける魔法のチカラがあると思っています。今、いいこと言いました(笑)。これからもスポーツを通してたくさんの方と出会って、障がいの有無も性別も関係なく一緒に楽しむことを追求していきたいと思っています。

 

小林美由紀さん(WEリーグ)

東京ヴェルディがすごいなと思うことがあるんです。ベレーザはほとんどずっと日本一を獲り続けているようなチームで、皆さんよくご存じだと思いますが、ヴェルディのコーチングスタッフの中には男女の壁がないんですよね。『女子だからいやだ』みたいなものがない。レベルが高いということもあると思うのですが、男子の指導も女子の指導もサイクルで回っています。

通常は、女子は女子担当のスタッフ、男子は男子担当のスタッフと分かれていることが多くて、女子サッカーに行くのは都落ちするみたいなイメージがあるんです。それがないことは、コーチングスタッフと話をしていて『すごいな』と思います。選手たちも頑張っていますし、トップレベルだからということもあると思いますが、そこに全く差別がないことをとても羨ましいと思っています。

 

平原依文さん

皆さん、本当にありがとうございました。トークセッションを聴いていて改めて思ったのですが、社会や自身のなかにある無意識のバイアスを一旦疑ってみること、そしてそれを取り払ってみること、そこから意識的に変えられることがたくさんあるのではないかと感じました。その意識の変化があって、ジェンダーの問題は解決されるのではないでしょうか。そうすれば、“みんなの”WEリーグを実現することができるのではないかと思います。皆さん、貴重なお時間をありがとうございました。