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2023.07.14 トップ

Match Preview & Column #13

Match Preview

『大きな試合を経験したチームは徳島戦でどのような試合を見せるか』

前節FC町田ゼルビア戦(7月9日)の首位チームとの対戦、天皇杯・FC東京戦(同12日)と、東京ヴェルディにとっては重要な試合の連続だった。結果として、町田戦はドロー、天皇杯は敗戦という悔しい結果に終わったが、それでも、得たものは非常に大きかった。

最も大きかったのが、2試合とも大きくメンバーが違った中で、どちらのゲームでも今のヴェルディはこういうスタイルで戦っているというサッカーをしっかりと示せたことだろう。

高い位置から奪いに行く守備でボールを奪取し、即刻攻撃へとつなげ、サイドから崩して決定機をうかがう。前半から選手たちはフルパワーを発揮し、相手がバテたところで、メンバー変更を加えながら、逆にさらにギアを上げ、入ってきた選手が個性を発揮して攻撃の選択肢を広げ、得点を挙げていく。その結果、どちらも先制はされながらも、同点に追いつき、最後の最後まで相手を苦しめた。

ただ、それで満足している選手は誰一人いない。聞こえてきた声はむしろその真逆である。

「絶対にJ1に昇格して借りを返したい」「J1に絶対に上がりたいと、より一層おもいました」との言葉が相次いだ。



迎える今節、その思いをいかに表現し、結果をもって証明するか。大きな注目と期待が集まる。

対戦相手として迎える徳島は、直近5試合0勝4分1敗で現在17位となかなか勝ちきれない状況が続いている。だが、前線には9ゴールを挙げている森海渡、7ゴールの柿谷曜一朗という強力な点取り屋が揃っており、脅威となる。

大学時代、筑波大だった森と何度も対戦した同級生DF綱島悠斗(国士舘大)は、その特長についてこう話す。

「シュートが上手で、背後の抜け出しも素晴らしい。とにかく時間を与えてしまうととんでもないシュートが飛んでくるので、時間を与えないようにすることが大事。相手より一歩でも早く予測し、ボールを入れさせなかったり、とにかく仕事をする時間を与えないようにすことが大事になってくると思います」。

ただ、一方で、大学時代との違いとして「もう一人、横に柿谷選手という素晴らしいFWがいること」を挙げ警戒を強める。

それでも、齋藤功佑は、「相手は攻撃がストロングだと思いますが、僕らが守備がストロング。自分たちがこれまでやってきたことをしっかりと出せれば、必ず抑えられると思います」と、リスペクトしすぎることのないようにと、冷静さを崩さない。しっかりとビルドアップしてくるチームに対して、積み重ねてきている自分たちのサッカーを貫けるかが最大のポイントとなるだろう。

町田戦、FC東京戦の死闘を共に戦い、クラブ、チームとファンサポーターの絆はより一層深まった。J1昇格へ、もう1つも落としていい試合など存在しない。一戦必勝。

まずは、8試合ぶりにホームで勝利し、自動昇格への弾みとしたい。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・松田杏子)

Player's Column

『加藤蓮が取り組む試行錯誤、すべてはJ1昇格のために』

『球際・切り替え・運動量』。

明治大学時代に叩き込まれた同大学サッカー部に伝承され続けている三原則こそが、加藤蓮の礎だ。

北海道小樽市出身。雪国を連想させる色白な美肌と端正な容姿の持ち主だが、そのプレースタイルは外見のイメージを、いい意味で大きく覆す。主にワイドの選手として起用され、厭わずに汗をかいて上下動を繰り返し、激しく対峙相手と競り合い、泥臭くボールを奪う。

大卒2年目を迎え、昨季よりも先発での出場回数は減っているが、チームでの存在価値は着実に高まっている。

今季、城福浩監督が強く拘っているのがバトンをつなぐ戦い方である。先発メンバーが試合開始とともに100%の力を出し切り、その後を継いで交代で入ってきたフレッシュなメンバーがそれぞれの個性を100%チームにスパイスとして加え、ゲームの流れを変えることで、終盤へ向けてより一層勢いづいていくことでチームは勝ち点を積み重ねてきた。

そのゲームチェンジャーとしての役割は、先発出場に勝るとも劣らないほど重要なタスクを担う。その重要な任務の中でも、加藤蓮は輝きを放っている。

今季はワイドストライカー(サイドハーフ)での起用が主となっているだけに、「自分の良さであるゴール前に入っていくスピード、得点感覚」を特に意識してプレーしている。

そうした決定的な仕事こそが監督・コーチから求められていることも重々理解している。だからこそ、ここまで23試合出場、1ゴール、1アシストという結果には自分自身、まったく納得できていない。

「点を決めなければ勝てる試合も勝てないので、フィニッシュの精度をもっともっと上げていかなければいけないですし、チャンスメイクに絡む回数も増やしていく必要があると思っています」。

そうした課題を持ちつつも、加藤蓮にはユーティリティー性という誰にも負けない武器がある。

今季も、トップからセンターバックまで、ゴールキーパー以外の全てのポジションに配され、指揮官の求める役割をまっとうしている。

特に序盤戦、同時期に同じポジションの選手に故障離脱者が重なってしまった窮地が訪れたが、その中で、どのポジションでも発揮される加藤蓮の適応力と『球際・切り替え・運動量』の強度の高さは、城福サッカーを大いに助けた。

試合中でも自在に位置を動かせるだけに、監督にとっては非常に重宝する選手と言えよう。

先発で出た場合でも、途中から出た場合でも、「最初から100%の力を発揮する」ことが求められている中、いま、加藤蓮は非常に関心を持ち、試行錯誤していることがあるという。

それは、ルーティーンの確立だ。

「日々、食べる食事の量やタイミング、睡眠時間、摂取水分量、アップの仕方などの1つ1つが、スタメンで出る時と後半から出る時とでは変わってくるのかなと思っていて。そういうことを意識して試していた中で、それこそ、前節の町田戦(79日)で後半頭から入った時に、すんなり入れて『あ、これいいな』と思いました。先発出場の時とは、約1時間もピッチに立つ時間が違う計算になるのである。ベンチスタートが決まった時には、食事の量を少しだけ落とし、試合前に食べる捕食の少し増やすことでエネルギーを後半に持続させるようにしている。また、心肺の上げ方も重要な要素だと気がついた。

「試合に出る直前のアップでは、あまり上げられないんです。なので、試合前にピッチでアップできる時にめっちゃ上げたり、ハーフタイムにも追い込んでから試合に入ることで、試合で息が上がってもすぐに戻るというか、連続した動きにもついていけるようになるので、そこは意識して取り組んでいます。本当にそういう細部、小さなことの積み重ねが大事になる」。

 細部へのこだわり。その意味で、もうひとつ、最も大切にしていることがある。「ファースト・プレー」だ。

「自分の今日の状態を知るためにも、ファースト・プレーってすごく大事で。トラップしてパスをするとかではなく、競り合いに勝つとか、一発目で相手にガツン!と強くいくとか、とにかくガツガツいくということを意識しています」。

そこには、「自分を乗せるため」との意図がある。

「一発目でバチンといけると、そこからは何も考えなくても必然的に良いプレーができたりするものなんです。逆に、消極的に入って、脳の中でネガティブになってしまうと、行くべきところでも行けなくて、そこで勝てなかったら『あ、負けちゃった』と、どんどん負のサイクルにはまってしまう。とにかく、最初のプレーはアグレッシブに。ちょっと遠くてもシュートを打ったりとか、クロスを上げ切るとか、意識して前を選ぶ積極的なプレーをするようにしています」。

昨季までの起用ポジションだったサイドバックには深澤大輝、宮原和也が君臨する。今季勝負するサイドハーフでは、ここに来て北島祐二の状態が良い。そうした選手の名を挙げ、自身が現在置かれている立ち位置をしっかりと受け止めた上で、ポジション争いについて想いを吐露する。

「みんなの状態がいいからこそ、自分が(状態が)悪くなったらそこで終わってしまう。なんとしてもポジション争いに入っていかなければならないので、そういう時こそ、いかに良い準備をして、練習で100%の力を発揮するかということが大事だと思う。この先、何があるかわからない。いつ自分に出番が来ても、良いパフォーマンスが出せるように準備するだけです。激しいポジション争いをしながら、みんなが高め合っていくからこそ、チームのレベルも上がってくると思います。自分も負けないように頑張るだけです」。

首位・町田戦をピッチで、712日天皇杯でのFC東京との『東京ダービー』をスタンドから味わい、そのヴェルディファン・サポーターの大声援からあらためて気付かされたことがあった。

「一体感もあって、自分的にも町田戦のピッチであの雰囲気を味わえて、とてもうれしかったです。だからこそ勝ちたかったですし、天皇杯も勝てなくてすごく悔しかった。

 でも、これだけのヒリヒリした試合だったからこそ、自分も熱く楽しんでプレーができました。そういう『闘う中でサッカーを楽しむ』という本質的なところを忘れてはいけないなと、ヴェルディのファン・サポーターにあらためて思い出させてもらうことができました。本当に素晴らしい応援、最高の雰囲気を作ってくださって心から感謝しています」。

そんな、闘争心をさらに掻き立ててくれたファン・サポーターへの恩返しは、『J1昇格』しかない。

「今はまだ通過点。2位という良い順位にいますが、これからも順位争いするチームとの対戦がまだまだ残っています。もう1段階チームとしてクオリティを上げて、チーム力を上乗せして、そういう相手に絶対に勝っていかなければならない。これからは、たとえ内容が悪くても勝っていく強いチームになっていきたい。ファン・サポーターの声援を力に変えて、勝つだけだと思っています」。

個人としても、スタメン・フル出場を続けられる完全なレギュラー選手を目指し、さらなる成長を固く胸に誓う。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・松田杏子)