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2023.06.17 トップ

Match Preview & Column #11

Match Preview ザスパクサツ群馬

『過去の勝利が何かを約束する段階ではない。今節も“1勝”を獲りにいく』

614日(水)、天皇杯を含めて2試合連続逆転勝利で飾ったオフ明けの練習場。勝ったあとだからこそ漂う和やかな雰囲気で練習が開始されたが、ウォーミングアップを終えたところで、ピッチ中央で城福浩監督から「集合」の声がかかった。

「本来であれば、ウォームアップから、どんどん集中が研ぎ澄まされていくプロセスの中で、あの日はその速度が遅かったんです。なので、『お前ら、2試合逆転勝利して、何かを得られのたか?何か約束されたものがあるのか?』と、いきなり喝を入れました」。決して浮ついていたわけではないという。だが、指揮官のその一喝のおかげで、選手たちはみな、いつも以上に引き締めて今週の練習に臨んだ。

今節でリーグ前半戦を終えることになるが、東京ヴェルディに慢心も中弛みも一切ない。

前節のファジアーノ岡山戦、一番の収穫は、やはりなんと言ってもリーグ戦で初めて逆転勝利を収めたことだろう。これまで先制された試合をひっくりかえすことができなかっただけに、そのパワーがついてきたことはチームとしての成長と捉えたい。特に、先に失点は喫したとは言え、これまで通り自分たちスタイルとするハイライン、ハイプレスを敢行し、主導権を握りながら試合を進めた上で、前節は攻撃の形として、「予測や判断も含め、みんなのアイデアや質が見えた部分があった」と、齋藤功佑はシュートも含めたさまざまなバリエーションが出たことに手応えを感じたと話す。

また、17本ものシュートを放ちつつも、1点を返した後は最後まで岡山の堅守の壁をなかなか崩せずにいたが、決して焦れることなく攻め続け、最後の最後、アディショナルタイムでセットプレーから山越康平の逆転弾が生まれた、チームとしての執念も見事だった。同点弾の齋藤、決勝点をアシストした北島祐二はじめ、途中から入ったゲームチェンジャーたちが、それぞれハイパフォーマンスでギアチェンジの役割を果たしたことも大きな要因といえよう。まさに、城福監督が目指す、全員がバトンを繋いで掴んだ、内容、結果の伴う勝利となった。

前半戦最後の対戦相手は、7日(水)に天皇杯で対戦したばかりのザスパクサツ群馬となる。とはいえ、恐らくお互いにメンバーを大きく変えてくることが予想される。

その中で、リーグ戦の戦い方を見た上での印象を、森田晃樹は「スローインなどでなるべく前に投げて、敵の深い位置でプレーするとか、嫌なところをついてくるチーム。町田ゼルビアになんとなく似ている感じ」だと話す。また、ポイントの1つとしては、「セカンドボールの回収」を挙げる。

「岡山戦、特に前半はそれができていたことで自分たちのペースでできていたので、この試合もそこは大事にしたい」。

また、北島祐二は、「守備では忠実にスライドしてくるチーム」とした上で、「そこをどう剥がすのか、誰が剥がすのか。一枚剥がすことができれば必ずどこかが空くのでビッグチャンスになるはず」と、自らも相手を剥がすプレーを得意とするだけに、より意識を高めている。

「先に点を取られると厳しくなるので、セットプレーノリスタートも含め、先制点を取られないように強く意識したい」と森田主将。チーム全員で声を掛け合い、90分間通して集中したゲームを目指す。

選手たちはみな、口を揃える。「最近、本当にホームで勝てていないのが一番悔しい」と。

そこに、さらに城福監督は次のように付け加える。

「上に食らいついていきたい。おそらく1試合、2試合で順位が大きく変わるところに僕らはいます。でも、僕らの上には1つ(勝点で)走っているチームがあって、あとは団子状態という感じです。本当に気を抜いたら、数週間後にはどんな立ち位置になっているかわからないような状況なので、どうしても今の順位から落としたくないですし、上から離されたくないという思いが強いです。それは選手たちも全く同じ思いだと思うので、この試合、すごく引き締まったゲームをやってくれると思っています」。

上位争いを繰り広げられるこいとの喜びと厳しさを胸に、今節も全身全霊で1勝を勝ち取りにいく。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤篤)

Player's Column

『成長のため選んだ移籍。齋藤功佑が求め、魅了される“熱”とは』

頼れる男が帰って来た。

今年、横浜FCから完全移籍で加入した齋藤功佑だ。早い段階から城福浩監督の信頼を勝ち取ると、開幕戦からスタメンに名を連ね続け、チームの開幕ダッシュに大貢献。主にインサイドハーフとして攻撃の核となり、守備時には最前列に上がってFW選手とともにファースト・ディフェンダーとなって城福ヴェルディの肝である前線からの激しいプレッシャーのスイッチ役を担っていた。

 だが、420日に左ヒラメ筋肉離れを発症し、全治約5週間の長期離脱を余儀なくされたのだった。約二週間前に梶川諒太の長期離脱が決まったばかりだっただけに、早くも主力としてチームに欠かせぬ存在となっていた齋藤の故障は、痛恨と言わざるを得なかった。

ただ、下を向いてばかりもいられない。離脱中は、その時だからこそできることに目を向け、引き出しを増やした。その後、河村慶人、林尚輝、平智広と、主力選手に続々と戦線離脱者が重なってしまった窮地を、「おそらく、人間、困った時に一番新しい発想が生まれると思う」と、指揮官がシステムや選手起用に工夫を凝らした中でチャンスを得、与えられたタスクを懸命に果たそうと努めるチームメイトたちの戦いぶりに、スタンドから見て感じることはあまりに多かった。

「試合に出ている選手たちが示している強度だったり、インテンシティ、戦う姿勢、ゴールへ向かっていく意欲などは、外から見ていてもすごく刺激になりました。自分が入った時に、どうやって効果的にアクセントを加えられるかなぁと考えながら見たり、出ていない選手たちと、『ここはこうだよね。ああだよね』などと言い合いながら、イメージの共有を深めるという時間にはできたと思っています。

チーム的にも、怪我人が多い中で結果が出せているというのはすごくいいことだと思う。勝ちながら修正していく部分だったり、僕も含め、少しずつ怪我人が戻ってきて、しっかりと加わって、チームを活性化できるようにやって行かなければと思っています」。

19節仙台戦で9試合ぶりに復帰を遂げ、前節(第20節)と2試合連続で途中出場中。チームのレベルアップのためにも、ここからさらに状態を上げて、再びスタメン争いを挑んでいく。

約1ヶ月半もの間ピッチからは離れたが、スクール生から身を置いた横浜FCを「出場機会を求めてと、自分の成長のために」自ら卒業した決断が決して間違ってはいなかったことは、この約半年で確信している。

「いろいろな面で前向きにやれていますし、自分の中で充実感を感じながらやれています。そしてさらにもう一歩、成長できるとも思っている。インテンシティの部分やゴールの部分、チームにどんな影響を与えられるかといった部分も、1つずつより高いものを目指してやっていきたいと思っています」。

中でも、最も自身の成長を実感しているのが「チーム内での影響力」だという。これまで、多くのお手本となる先輩たちのチーム内での振る舞いや言動、そしてその影響力を見て来た中で、その大事さを痛感してきた。

「チーム内で信頼を勝ち得ている選手がどういう発言をすると、どういう影響を与えるというのが、自分の中でなんとなくありました」。

今回、人生初の移籍によって、人間関係を含め、身を置く環境が一変したこと。その新天地で、早くからサッカー面で信頼を勝ち取れたこと。ここまでプロ7年間で積み上げて来た経験や26歳という年齢、そうしたあらゆる要素が好機になった。

「今までは与えてもらう立場でした。それを、今年からは自分が少しでもチームや周囲に刺激を与えながら、自分も刺激をもらいながらやるということを、いかに自分なりにやっていけるかを模索しながらやっています。

もう自分も若くはないので、自分の経験してきたことを伝えることも中堅・ベテラン選手の価値だと思っていますし、いろいろな選手とコミュニケーションとりながら、要求しあって、刺激を受けて、より高いものを目指していくということは、今、意識してやれていると思う。そうやってサッカーの話をすることで、自分も深まっている。間違いなくヴェルディに来て成長できているなと思います」。

3月頃から森田晃樹や林尚輝はじめ、希望選手に声をかけ、選手同士で映像を見ながら細かなシーンの分析やイメージを共有するようになった。徐々に選手の数も増えているようだ。まだ加入して間もないにもかかわらず、決して遠慮することなくチームにとってプラスになると思う行動を実行できる存在は、実はなかなかいない。

「自分が上手くなるため、チームとして結果を出すために大事だと思ったことは全てやりたい。サッカーに関しては熱意を出していきたい」と語る新加入選手は非常に貴重だ。

また、熱意の表現の仕方も、ヴェルディに来て、あえて変えた。

前節岡山戦、01のビハインドでピッチに入った齋藤は、後半20分に同点ゴールを決めた。何度も大きく手を叩き、腕を広げ、大きな声で歓喜を爆発させた背番号『8』の姿には、逆転勝利への強い意欲が漲っていた。

「シンプルに嬉しかったのもありますが、みたいなものを、今まではなかなか表現するタイプではなく、飄々とやっていました。でも、そういう熱い想いというのは、出しても悪影響にはならないですし、逆にプラスに働くのかなとも思うので、表現していこうと思っています」。

「勝ちたいという気持ちだったり、サッカーに対する想いの強さは誰にも負けない」という齋藤。だからこそ、新しい戦友・ヴェルディのファン・サポーターが大好きになった。

忘れられない試合があるという。第8節清水エスパルス戦だ。相手の監督が交代した初戦だった。試合前のウォーミングアップ時だと記憶している。新任監督が自チームの選手たちに何かを話している時に、ヴェルディのファン・サポーターの声援がひときわ大きくなったのを聞き、齋藤は心をわし掴みにされた。

「ブーイングではなく、ヴェルディへの応援の声量で相手の指示をかき消すという情熱、熱意がものすごく伝わってきて、本当に勝利のために後押ししてくれているんだなと、心の底から思いました」。

 声援というクリーンな形で相手の思い通りにさせないというバックアップに、共に戦ってくれている大切な戦友だと、心から頼もしく思っている。

「もちろん、まだ来て間もないので、全てを知っているわけではありませんが、ヴェルディのファン・サポーターの声援は本当に迫力があるなと思います。その熱意に、結果で答えたいと思います」。

 

今節で前半戦を終える。完全復活を遂げて迎える後半戦、誰よりも熱く、チームを牽引していく。

(文・上岡真里江 スポーツライター/写真・近藤篤)